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□ 著書名         【R.P.G. 】
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□ ジャンル        現代ミステリ
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□ 著者             宮部 みゆき
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□ 出版社      集英社文庫    2001.8.25発行   306P
              ISBN4-08-747349-X   476円(税別)
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ネット上の疑似家族の「お父さん」が刺殺された。その3日前に刺殺された女性と遺留品が共通している。
家族の絆とは、癒しなのか? 呪縛なのか? 舞台劇のように、時間と空間を限定した長編現代ミステリー。

「RPG」と聞きますと、有名タイトルなどが並ぶ、あのジャンルのゲームの事を想起してしまいます。
実際の意味は、本の中扉を引用いたしますが、
「ロール・プレーイング(Role-playing)
 実際の場面を想定し、さまざまな役割を演じさせて、問題の解決法を会得させる学習法。役割実演法。」
…となります。
残念ながら、FFやらドラクエといったゲームとは関係ないようです。

まぁ、その話は置いといて、内容について。
 
ネット上で知り合った人たちが、疑似家族としてチャットをしたりメールの交換をしていたのですが、ある日、その疑似家族の「お父さん」が現実の世界で殺害されます。
構成されていた疑似家族は「お父さん」と「お母さん」と娘の「カズミ」と弟の「ミノル」の4人。
ちなみに、殺された「お父さん」も現実で家庭があり、奥さんと娘さんがいます。
ネタバレになるのでこれ以上は書きませんが、「お父さん」を殺したのは誰か。そして殺された理由とは、というのが骨子です。

ネット上の擬似家族というテーマ。
年代がたったら風化しそうなネタではありますが、今取り上げるものとしては面白いテーマだと思います。まさしく旬かと。
ネット社会となって久しい現代ですが、どっかでありそうなお話です。
「ありそう」だなんて考えてちょっと怖い思いをしました。

ドラマというより、まるでお芝居を観ているような気分でサクサク読み進めていくことができます。
ミステリとしては、時空間の移動などが乏しいのですが、そんな事を気付かせないほどです。
あとがきに「単行本にするには少々枚数が短く、中短編集に入れるには独立性が強すぎて収まりが悪い」と宮部さんご自身が語るように、短いお話と言えるでしょう。
しかし、長編にひけをとらない完成度であると思います。

結論にふれることは避けますが、加害者も被害者も可哀想です。
事件は解決しても、結局、誰が悪いのかわかりません。…というのも、キャラクタが平等に書き分けているからこそ、そう思えるのでしょうね。

ちなみに、宣伝というわけではないでしょうけど、宮部さんの他の作品【クロスファイア】【模倣犯】に出てくる刑事が共演しています。
この二人の過去を知らずとも楽しめますし、その二人について知っていればなお、楽しめる、という仕掛けになっています。
(ちなみに僕は2作とも未読状態でしたが、楽しめました。これからその2作を読もうかと思っています)
個人的には、こういった既刊の小説の登場人物が別の作品で役割を担う、というのも楽しい仕掛けだと思います。

そういえばこの作品でちょっとひっかかったのは、「おとり捜査」について。
アレは大丈夫なのかな、って思いました。 まぁ、よく刑事ドラマでもあるお話ですが、現実はどうなのでしょうね?
あと警察の取調室とマジックミラー。
かつてちょっとした機会があって見学させてもらった事がありますが、そういうところまでは見せてもらえませんでした。
今にして思えばちょっと残念だったかと。
 

ネット社会におられる方、「家族って?」と思うことがあった方、宮部みゆきさんのファンの方、におすすめです。
 

参考リンク : 集英社サイト内「R.P.G」公式ページ
 

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Copyright(C) Nobuhiko Takano 2005