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□ 著書名         【輪違屋糸里】
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□ ジャンル        時代小説
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□ 著者            浅田 次郎
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□ 出版社          文藝春秋   価格1575円(税別)
                       ISBN4-16-322950-7   2004年5月   304ページ
                  ISBN4-16-322960-4   2004年5月   285ページ
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ご恩だけ、胸に刻め。

新撰組の芹沢鴨というと、大抵のお話で悪党扱いです。
で、このお話では彼は酒癖は悪いものの、実はひとかどの人物であった、という事になっております。
まぁ、ホントのところはどうだったのかは不明ですね。
その彼の暗殺までのお話です。

芹沢鴨、いろんなお話で大抵は悪人になっちゃってますが、あのように実はいい人だったのかもしれませんね。
近藤をいい人に仕立て上げたいが為に悪人にされちゃっているような気がします。
そもそも、善悪なんてものはどうとでも考えられるわけですし、近藤だってあやしいものだ、なんて思ってしまいます。
近藤こそ、すごく不器用で、実は目端の利かない人物だったのではないか、などと思うのです。
やはり芹沢&お梅の最期はやはり寂しいです。
無理を承知の上ですが、二人には幸せになって欲しかった気がいたします。

糸里、吉栄、お梅、おまさ、お勝らの女性からの視点も面白かったです。
著者の浅田さんはこのお話と【壬生義士伝】が「好一対の男雛・女雛の関係」と言っておられるとか。
たしかに、そのような関係と見えるかもしれません。

芸を極めて「太夫」にあがり、好きな人と2人で平和に暮らすという夢の間で揺れる糸里と吉栄。
大変な苦労を重ね、情にもろかったりするお梅。しかしながら、周囲から疎まれ、嫌われてしまいます。
この三人、なんだか悲しくなってしまいました。
おまさとお勝の噂好きっぷりもまた既視感漂う感じがしました。
おまさは疎ましかった新撰組にもだんだんと情が移り、心の中では彼らを擁護するようになります。
お勝はお梅の唯一の理解者となりますが、流れを変えることはできません。

また、このお話では芹沢派の隊士、平山、平間についていろいろ語られます。
なにかとスルーされがちな人のような気がしていましたが、ちゃんと取り扱われていてよかったです。

ところで、芸妓さんの位について、この本で初めて知りました。
「太夫」ってかなりエラいとは思っていましたが、実際のところは宮中では「五位の位」だそうです。
三位以上が帝にお目どおりがかなうらしいので、だいぶ偉い位になるのですね。
とはいえ、こんなお話もあったりしますが。
 

新選組モノが好きな方、時代小説がお好きな方、浅田次郎さんのファンの方に、おすすめです。
 

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Copyright(C) Nobuhiko Takano 2005