貧と賤と富と貴とが、けっして人間の値打ちを決めはしない。
新選組のお話です。
新選組といいますと、近藤、土方、沖田が中心のお話が多いですが、このお話はその彼らは完全なる脇役となっています。
このお話では平隊士の吉村貫一郎なる人物が主役です。
吉村、実際に名前が記録に残っているそうですが、明らかにされてない部分が多い人のようです。
お話通りの人だったかもしれませんし、そうでなかったのかもしれません。
…とはいえ、このお話を読んでいたら、全部本当の事だったような気がしてしまいます。
お話は、聞き手が各人物にインタビューをする形で進んでいきます。
隊士仲間から、超有名人もでてきます。(彼が語る坂本龍馬暗殺のあたりは、僕の中でのイメージ合わなかった気がしますが)
聞き手によって、現代から過去、そのまた過去、と場面が二転三転しますが、違和感なく読んでいくことができます。
冒頭の吉村はどうなるの?どうなったの?と気になってしょうがなく、折々の人物の話に聞き入ってしまいあっという間に結末まで読んでしまいました。
結末などの委細は書きませんが、なんともやりきれないお話でありました。
彼が脱藩して新撰組に入隊し、やりたくない仕事までやってお金を稼ぐことに没頭した理由、また彼が自分の出身地や家族の事を語ったりする所で目頭が熱くなってしまいました。
はたして、「義」とはなんだったんだろうか?と考えてしまいます。
この本を読んでいた時、とある有名サイトの管理人さんもこのお話を読まれたようで、サイトに感想をアップしておられました。
「吉村の守銭奴っぷりがイヤだったが、彼の目的を考えると感動した」との事でしたが、僕も同感です。
このお話、ちょっと前に中井貴一主演で映画になっておりまして、さっそく観ました。
所々原作と違うところもありますが、なかなかの内容でした。
観る前は吉村のイメージが…と思ってましたが、見ているうちに「ああ、こんな感じかも」と思うようになりました。
他のキャストで気になったのは、佐藤浩市が斎藤一役で、堺雅人が沖田総司役であったことでしょうか。
比べちゃいけないのですが、双方とも昨年のNHKの大河ドラマ「新選組!」に出演しており、それぞれが芹沢、山南役でした。
おかげで、この映画の斎藤が芹沢にしか見えなくて、あんまし出てこないとは言え沖田は違和感ありまくりで大変でした(笑)
NHK大河をずーっと見ていたせいか、自分の中の新撰組隊士のイメージは、あのキャストで固定されてしまったようで、、他の人が演っていると違和感を感じてしまいます。
新選組モノが好きな方、時代小説がお好きな方、浅田次郎さんのファンの方に、おすすめです。