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□ 著書名         【冷静と情熱のあいだ】
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□ ジャンル        恋愛小説
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□ 著者             江國香織、辻仁成
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□ 出版社      角川書店 1999.9.30発行
           ISBN4-04-873176-9 1400円  271P 「Rosso」
           ISBN4-04-873188-2 1400円  258P 「Blue」
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この作品は、江国さんが女性の視点から、辻さんが男性の視点から、ひとつの恋の形を描いた、新たな試みの共作恋愛小説です。
江國版が「Rosso」、辻版が「Blue」となっています。
このお2人の共作は、すごく贅沢でロマンチックな展開でした。雑誌掲載時には二人の各章が交互に載っていたそうです。
交互に読んでいくと、なんとも言えない「色」が見えてきます。
おそらくこの「色」は各人一人だけの作品では出せなかったように思えます。

ちなみにこの本が発売されたのは2000年でして、当時「今世紀最後の最高の恋愛小説」と銘打って売っていました。
僕は、本自体は発売日とほぼ同時に手に入れていたのですが、読み出すのが少し遅くなってしまいまして、読み出した2000年の数力月、一時的に作品内に流れる時間とまったく同じ時間を過ごす事になり、カレンダーを見ながらちょっとどきどきしました。

かなり端折りますが、大筋は学生時代の恋人同士が別れ、10年後に付き合っていた当時話していた約束を頼りに再会するというのがストーリーです。
それだけ聞くと「あら、そうですか。」で終わってしまいそうですが、その内容は飽きさせません。
語られるテ一マは「祈り」にも似た切ない想い。想いを未来への希望へと紡ぐ。 そんな経過が見え隠れしました。このお話の根底にある「約束」。
なんといっても二人が別れる前の約束ですから、相手が守ってくれるものかどうか、いやその前にその約束自体を覚えていてくれるかどうかも怪しいところですよね。
現実なら無茶っぽいところではありますが、それは小説の物語ということで…。

あおいと順正という二人が主人公です。
先にも触れましたが、この二人は学生時代に付き合っていて、いろいろあって別れてしまった訳ですが、よくよく考えてみたらこの「別れる」っていうのは一仕事ですね。
いくら好きな相手と言っても、やはり所詮は他人同士ですし、お互いの事を完全には解ってあげられないところはあると思います。
このお話を読んでいたら、たまに世間で言うところの「良い別れ方」ってどんなのだろう?って思いました。
別れるという事実は、ちょっとした不協和音が引き金になることもあれば、何か根本的な問題から起きる事もあります。
まさに突然であったり、ひたひたとその原因が訪れたり。
何をもって「良い」か「悪い」か解らないですけど、彼もしくは彼女の為に、と思った事が裏目にでるという事も往々にしてある事と思います。

誰かと付き合って、理由はどうあれまた離れて。
でもどこかで心にひっかかっていて、忘れられる事ができない事や、ふとした時に思い出してしまう事ってあると思います。
どうでも良いことだったり、すごく大切なことだったり。
このお話でもお互いの過去を織り交ぜて、そのような事に触れられています。
存外、「過去という名の美しい思い出」に昇華されてしまうものなのかもしれませんけどね。

このお話でも、あおいが順正と破局した時の理由とその心理が描かれているのですが、事実は単純と言えば単純なのですが、その経過を考えるとちょっとぞっとしました。

もう一つ考えたのは、あおいと順正が別れて、お互いの時間を過ごし、そこで得たパートナーの事。
あおいにはマーヴが、順正のには芽実という女性がいるのですが、彼らはその後どうなるのだろう、と。
…それはまた別のお話、ですね。

さて、このお話は映画化されました。
阿形順正役に竹野内豊さん、あおい役に香港のスター、ケリー・チャンというキャスティングです。
順正はほぼ想像通りだったのですが、あおいはちとキツめの印象を受けました。
しかし、映画が終わる頃にはばっちりイメージ通り、と思えてしまいます。
映画は本とほぼ同じの展開なのですが、要所要所で良い演出がなされており、なかなか楽しめました。
イタリアの風景も美しく、良い映画だったかと。思わずDVDを購入してしまいました。
 

大切な人と忘れられない約束をした事があるひとに、おすすめです。

#また、江國さんと辻さんのこのお二人は【恋するために生まれた】という本を出しておられます。
  この本でお二人に興味が出た方は楽しめると思います。

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Copyright(C) Nobuhiko Takano 2006