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□ 著書名         【眠れるラプンツェル】
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□ ジャンル        恋愛小説
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□ 著者             山本文緒
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□ 出版社      幻冬舎文庫    1998.4.25発行   318ページ
              ISBN4-87728-588-1   533円(税別)
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「暇ですなあ」。そう呟いて、ひとりで笑う。

山本文緒さんの作品です。
平凡に過ぎゆく日常に起こるドラマと、ちょっと意外な結末が読みどころなこのお話。
そのドラマの終幕まで一気に読まされてしまう展開に、このお話の魅力があると思います。
この手の本には珍しく、先が気になって気になってしょうがなかったです。

主人公の手塚汐美(しおみ)は、団地に住む専業主婦。
結婚6年目で28才。夫はやり手のCMディレクターで忙しいらしく、月に一度くらいしか家に帰ってきません。
何をせよというノルマも無いし、子供はいません。
夫はちゃんと生活費を振り込んでくれるので、毎日の生活の心配もありません。
…と、暇と金が充分にあるというご大層な身分で毎日を過ごしています。
ヒマでヒマでしょーがないような事を言っておきながら、この生活に満足している、と。
そうこうしているうちに猫のタビと少年が彼女の前に現れます。
猫は団地で飼うことを禁じられているにも関わらず、勝手に夫がもらってきたもので、こっそりと飼い始める事になります。
もう一つの少年というのは隣家に住む中一の男の子です。
あろうことか彼女は、その男の子に対して恋心を抱いてしまいます。
15歳年下だとか、そういう事を差し引いても、ちょっと考えられないシチュエーション。
そもそも一人前の主婦がやることではない、とも思えるのですが、まぁ解らないでもありません。
物語がすすむにつれて、汐美がだんだん壊れていきます。(壊れるというのはちょっと正しくない表現ではありますが)

しかし、こんなにも怖いお話だというのに、読後はすごく爽快です。

さて、お気づきの方もおられるかもしれませんんが、本書の題名にある「ラプンツェル」とは、グリム童話に出てくる、塔に閉じ込められた女の子の名前です。
一見幸せそうなこの生活を幽閉されたお姫様になぞらえてお話が書いてある、ということで。

ところで、このマンション。
【あなたには帰る家がある】の佐藤さんも一緒に住んでいます。このお話にもちらっと出てきて、汐美と会話もあります。
ちょっと良い演出だな、なんて思いました。
しかし、このグリーンヒルズというマンション。
こんなにも「変わった」入居者が多いなんて、さぞや管理人さんも大変でしょうね。
ついでに、近所の主婦から「子供はまだ?」だなんて訪ねられる環境だなんて個人的にはイヤです。
ほっておいてください、だなんて思う僕は恐らく集合住宅向きな性格ではないのでしょう。
 

既婚でヒマな方、隣家の人が気になる方、山本文緒さんのファンの方におすすめです。

参考ページ :  山本文緒オフィシャルページ
 
 

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Copyright(C) Nobuhiko Takano 2004