「せつない」お話です。
ごく普通の家庭、杉田家のダンナさんの、杉田平介の視点で物語は進みます。
平介の妻・直子と娘・藻奈美(もなみ)を乗せたバスが転落事故を起こし、直子が亡くなってしまいます。
しかし、死んだはずの直子が、藻奈美に乗り移って…といった感じで話は始まります。
果たして死んだ人の意識が他の人の体に宿ってしまうと言うことが現実にあるのか、という話にもなるのですが、この件に関しては今回はツッコミを入れてはいけません。
その手の本をめくると現実にホントにあるそうですが…。
世の中、どうにも解き明かせない事という事とはけっこうあるみたいですね。
そういえば高畑京一郎さんの【ダブル・キャスト】
でも似たような事を取り扱っていましたね。
ちなみに、こういった設定はどうにも漫画的なニュアンスを感じてしまうのですが、このお話では根底のそういった物に気づかせない現実感みたいなものがありました。
それはさておき、見た目は小学5年生の娘なのに意識は直子のものを持つ藻奈美。
藻奈美(直子)はこの現実を受け入れて、藻奈美として人生を過ごしていくことを決意します。
一方、妻であり娘である女性との生活に苦悩する平介。
僕は男だからか、平介の気持ちがものすごく解りました。
タイトルにもある「秘密」。お話の最後のあたりで急激に明らかになってきます。
あまりに切ないこのお話。
夫も妻もかわいそうです。 読んでいて辛い気分になってしまうところもありました。
読後も、登場人物たちの心情に思いを馳せてしまいます。
さて、このお話、映画化されています。
平介を小林薫さん、藻奈美(直子)を広末涼子さん、直子を岸本加世子さんが演じておられます。
藻奈美が高校生だったり、ラストが若干違って見えたり、小説版と若干細かい所が違っています。
ところで、こういった事は賛否両論でしょうけど、映画化というものは良い例と悪い例があるような気がします。
たしかに「原作」を意識したら映画化という仕事はけっこう難しいものだと思います。
原作で描かれているシーンを映像化するだけ、ということもあるでしょうし、映画の制作サイドのシュミからか、大幅に話が置き換えられてしまったり、いろんな例がありますね。
ただ、この「秘密」に関しては映画も楽しめました。
原作を読まれて好印象を持たれた方は、映画版も見てみられる事をおすすめします。
もちろん、その逆もおすすめです。
せつない話を読んでみたい方、「秘密」を持っている方、ご結婚されている方、におすすめです。