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□ 著書名    【動物のお医者さん】
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□ ジャンル   漫画
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□ 著者     佐々木 倫子
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□ 出版社        白泉社
                      1989年 04月 19日 コミックス第1巻発行 (全11巻)
                      1995年 12月 19日 漫画文庫第1巻発行 (全8巻) 
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けっこう有名な作品なのでご存知の方も多いかもしれませんが、男性陣を初めとして世の中的にはあまり浸透していないかもしれないのでご紹介します。
ちなみに一応少女漫画の路線で連載されていた物なのですが、男性でも気にせずに楽しめる内容です。

かつてシベリアンハスキーなる般若のような恐い顔をした犬がペットとしてブームになりましたが、そのきっかけがこの漫画であるそうです。
なるほどねぇと思っていた今日この頃ですが、奥様と買い物がてら近所を散歩していると、ご近所のお家でシベリアンハスキーを飼っている家がありました。
そのシベリアンハスキーはなかなかフレンドリーな奴(?)でして、繋いである鎖いっぱいまで僕らに近寄ってきてワンワン吠えながら興奮して走り回るのです。
何となく僕たちが見ていたら、その家の中から飼い主らしき人が、
「これっ! ちょびっ!!」
と大きな声で一喝しておられました。 思わず奥様と顔を見合わせてしまいました。
この漫画を見てハスキー犬にチョビと名付けた人も多数おられるらしい、とのことですが、まさか実際に見かけるとは思いませんでした。
(しかもご近所で)

あと、この漫画の影響で大学の獣医学部の志願倍率が激増したという社会現象まで起こしたそうです。
そんないわくありげ(?)な出来事もある「動物のお医者さん」ですが、タイトルだけ見るとそれこそ「獣医さんと動物との心温まるよいお話」では?いう印象を持たれるかも知れませんが、残念ながら、そんな要素は全くと言ってもいいほどありません。

舞台は、某国立大学(学部などから推測するに北海道大学でしょうか)の獣医学部です。(つまり獣医さんのタマゴのお話です)
ちなみに先ほど付け加え忘れましたが、優しい獣医さんのお話はともかく、学校を舞台とするいわゆる学校モノにありがちなラブコメも一切無く、内容的には笑える作品です。
色々な偶然(必然でしょうか?)からこの獣医学部に進学することになった主人公の西根公輝(ちなみにこれで「にしねまさき」と読むのですが、作中ではいろいろありまして「ハムテル」や「キミテル」などと呼ばれています)と、その周りの人間、そして数々の動物たちの色々なエピソードが描かれています。
動物達は台詞などが書き加えられてやや擬人化表現されておりますが、元の動物が持つ性格を上手く反映した上(犬なら犬らしく、猫なら猫らしく)そそして、明確な「人間的性格」を与えられており、漫画のキャラクターとしてかなり魅力的です。
こういった描写は動物を飼っている人、動物が好きな人にはたまらないんじゃないでしょうか。
主な動物たちはチョビことおとなしくて主人に従順なシベリアンハスキー、なぜか関西弁を喋る猫、ミケ、見境なしで暴力的なニワトリ、ヒヨちゃん。
ホンモノの動物はけっしてしゃべらないのですが、この作品に付けらえた動物たちのセリフは秀逸でかなりいい味をだしていると思います。

当然、作品内に登場する人間たちも動物達に負けず劣らず癖のある人物が揃っています。
クールで冷めているせいかいまいち性格の掴みにくい主人公ハムテルこと西根公輝、そのハムテルとは違ってやや慌て者の二階堂、そのハムテルと二階堂の先輩にあたる菱沼さん。
常識的で紳士的な菅原教授とその逆で常識の全く通用しない漆原教授。
どの人も個性的で癖の強いキャラクターですが、よくよく考えてみたら案外身近にいそうな人々です。

しかし、少女漫画然としたタッチの絵に似合わない話の内容とのギャップの激しさもこの漫画の面白いところでしょうか。
そして漫画に描かれる一つ一つの出来事が現実味があり、そのあたりも興味がそそられます。
ここまで現実感をにおわせるには、作者による綿密な下調べと経験者、もしくは有能なブレーンが背後にあるからでしょうけど・・・
絵と言えば、昨今の漫画においても変にデフォルメされた感じの絵柄の作品が見られる中(そりゃ動物ってあまりリアルに書いたら恐いし、かわいく描きすぎるとぬいぐるみみたいだし、と難しいところではありましょうけど)この作品ではよりホンモノらしく描いてあります。
絵のタッチの巧みさもこの作品の目を引くところと思います。

漫画文庫にもなっているこの作品ですが、ほとんどが一話完結のお話の構成なので気軽に読めるかと思います。
機会があったらぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

動物好き、そうでなくとも動物に興味がある方おすすめです。
 

#「動物のお医者さん」を読まれて佐々木氏に興味がわかれた方は。
 某国のドジな新米スパイを描いた『ペパミント・スパイ』
 健忘症の少年とその家族のコミカルな生活を描いた『食卓の魔術師』
 天然ボケぎみの美人姉妹の生活を描いた『林檎でダイエット』
 新米看護婦の活躍(?)を描いた『おたんこナース』(ここでやっと連載が男性誌になりました)
 …などなど、他の作品もおすすめです。
 
 

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Copyright(C) Nobuhiko Takano 2003