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□ 著書名    【チェリーブラッサム】
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□ ジャンル   短編集
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□ 著者      山本 文緒
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□ 出版社     角川文庫  2000.4.25発行  216ページ
           ISBN4-04-197007-5   419円(税別)
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おとうさんの仕事を手伝ってくれればいいんだ。

【おひさまのブランケット】 同様、コバルト文庫からの復刊です。
こちらは若干ですが、ミステリの要素も入っています。
若年層向けなのは否めませんが、よいお話だと思います。
ジャンルとして少女小説なわけで、現在の山本さんの文体とは明らかに違いますが、面白く読み進めることできます。
カバー裏の紹介文には、「少女の成長を明るくドラマチックに描いた、山本文緒のルーツとも いえる傑作長編」とあります。
この作品はかつて「ラブリーをつかまえろ」というタイトルで出版されたものを改題・加筆訂正したものだそうです。
そちらのほうも読んでみたくなりました。

主人公・桜井実乃は中学2年生。
母親を早くに亡くし、父親と1歳上の姉・花乃と3人暮らし。
突如、父親が会社を辞職し、町内の便利屋を開業します。
そこから実乃も騒ぎに巻き込まれます。
早速持ち込まれた依頼は、ある家で飼われていた盲導犬、ラブリーを探して欲しいとの事件。
実乃はなんだかんだと言いつつ父・豹平に協力するのですが、豹平らは実乃の気持ちを少しも理解せず、いつも要領の良い花乃の方を褒めます。
誰も理解してくれない、と実乃は彼女の良き理解者であるお寺の永春さんのところへ駆け込んでしまいます。
自分は皆のことを考えていつも一生懸命やっているのに、周りは自分のことを判ってくれない。
しかし、よく考えてみると、自分の方こそ周りの人の気持ちを少しも判っていなかったのかもしれない。
…と、実乃が考えだす辺りが読みどころでした。
謎解き及びラストの展開に関しては、少々物足りないような気もしますが、対象年齢を考えると納得しました。
 

少女漫画がお好きな方、平和なお話が好きな方、山本文緒さんのファンの方、におすすめです。
 

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Copyright(C) Nobuhiko Takano 2005