上座にパンダが一匹いるのが、どうしても解せない。
川上弘美さんの「うそばなし」です。
そもそもがタイトルからして意味不明で「?」と思ってしまいます。
タイトルの由来は、あとがきを読めば解りますが、どうにもこうにも。
春夏秋冬にわけて主人公の日常を綴った作品なのですが、摩訶不思議な「日常」のものです。
この作品中の雰囲気は、幻想的だなんて生やさしい言葉では表し切れないくらいです。珍妙です。
もぐらと一緒に写真をとったり、町内の縄文人街を散歩したり、中くらいの災難に見舞われ一時乳房等の数が二倍になったり。
奇想天外を通り越してもはや奇妙なのですが、女性はごく淡々と生活を送っていきます。
主人公は女性ですが、片想いの相手がいるのででっきり独身かと思いきや、夫も子供もいる人らしく。
でも、その子供は畳んで押入れにしまわれたり、夫が行方不明となったと思えば長持ちの中でにいるのを発見される、などという展開。
まるで想像力が追いつきません。
ここまできてしまったら、一般的な尺度でものを測ってはいけません。
カラスのジャン(ルイかも知れない)だとか、鮎正宗が好きな山本アユミミや、鮭のり弁当とトマトジュースを買う女の子についていってしまうぺたぺたさんなど、ツッコミどころ満載だけれども、何故か魅力的なキャラクター達がでてきます。
そういえば、コピー機の裏に住みついた4歳くらいの女の子というのがいました。
紙づまりを起こすと中にもぐりこんで上手に直してくれる、いつも歌っているのでコピーの間も退屈しない、とからしいのですが。
先だっても会社でコピー機の前で往生したことがあったので、こういう時あの女の子がいれば楽だろうに、などと思いを馳せてみたりしました。
ところで、この物語は川上さんご本人の夢日記から始まったとのこと。
どおりで、作中に登場する人物たちも小物も状況設定も、何もかもが微妙にシュールなのですね。
しかし随分変わった夢を見る方だとなかば感心してしまいます。
はらはらしたり、感動したりする作品ではないけれど、この妙な感じは他に類を見ないのはたしかだと思います。
山口マオさん微妙な絵この不思議な空間を演出してくれています。
現実をちょっと忘れたい方、夢をよく見られる方、川上弘美さんのファンの方に、おすすめです。