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□ 著書名         【ターン】
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□ ジャンル        純文学SF恋愛小説
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□ 著者            北村 薫
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□ 出版社        新潮社   2000.07.01発行   426ページ
               ISBN4-10-137322-1   590円 (税別)
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「くるりん」

北村薫さんの時間と人がテーマの小説のひとつです。
(他にも「スキップ」「リセット」というタイトルがあります。これを3連作とするならば、この「ターン」は真ん中にあたります。)

時間と人について書いた不思議なお話です。

ある日、主人公の真希は、交通事故を起こします。
その翌日から気が付いたら誰もいない世界に閉じこめられています。 現実世界そっくりなのですが、人どころか、動物や、虫もいない世界です。
その世界は夏で時間が止まり、毎日3時15分になると一日のすべてが元に戻り、毎日同じ日ばかりが続く、といった具合で。
元に戻るというのは、たとえば絵を描いていたとしても、次の日には白紙としてなかったことになる、という事です。
何をどうやっても、次の日には元に戻ってしまいます。
そんな中、かかるはずのない電話のベルが鳴って・・・とお話は続きます。
ネタバレになるので、このあたりにしておきます。

時間がとまって違う世界に飛ばされる、だとかそういったお話は映画や小説の語りぐさではありますが、このお話ではまた違った視点で描いてあります。
ところで、時間の話もさることながら、とてもきれいな恋愛小説である一面も持っています。
いささかおとぎ話チックではあるような気もしますが。
主人公も誰も彼もいい人ばっかりで、最後に登場する柿崎なる人物がめったやたらに悪い人、という感じです。
ディーラからか個人宅からか知りませんが、誰もいない世界で外車などを乗り回す柿崎。
時間が止まって、誰もいないのだったらやってみたいこと、だなんて自分も一瞬思っていただけに、ちょっとだけイヤな気持ちになりました。

冒頭、いきなり「二人称」で始まるのでどういう事かとまどいましたが、これも作者の巧妙なワナです。
後々になって、「なるほど」と思わされました。
文庫の最後の辺りに、作者自らが物語の矛盾点について解説をいれています。
幸運なことに、僕もこの矛盾点についてはなんとなく疑問に思っていたもので、そこを見通した解説を頂けた感じで、うれしかったです。

川上弘美さんがあとがきに一言添えられていたりして、それも楽しく読めました。

この作品、2001年に映画化されています。
あるお方が親切にビデオを貸してくださったので、さっそく見てみました。
牧瀬里穂さんが真希となって物語が進められています。
この長編をよく収めた、という感じでした。良い出来だと思います。
 
 

日常生活がつまらない方、「くるりん」したことがある方、もしくは「くるりん」したいと思った事がある方、におすすめです。
 

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Copyright(C) Nobuhiko Takano 2005