私と夫の生活は、表面はともかく日々愛憎うずまいている。
いつも週末だったら、私たちはまちがいなく木端微塵だ。南の島で木端微塵。
ちょっと憧れないこともないけれど。
江國香織さんはいわゆるサラリーマンのダンナさんとご結婚されたのですが、その自らの結婚生活を綴ったエッセイ集です。
「恋愛小説の名手」とか言われる彼女自身の生活はどうなのか、といった野次馬根性で読んでしまう部分もありました。
しかし、さすがに良いところを付いてきます。
思わずうなずいてしまうことがしばしばありました。
このお二人。時々危ういけれども、結局は良いご夫婦なんだなーって所に行き着いちゃったりします。
江國さんはご自身の結婚生活を「甘くてシビア」と語っておられます。
なんとも言い得て妙です。
さて、このたび紹介したこの本は文庫版です。
文庫版と言うからには、だいぶ前に出版されていたのですね。
この本が初版として出た頃、僕自身はは結婚しておらず、その頃は、まさか自分が近々に結婚生活だなんてものを送るだなんて夢にも思っていませんでした。
ですので、初めて読んだ時は「ふーん」って感じで流し読みをしていました。
ところが実際に自分が結婚して数年を経た今、読んでみると、また違う感想を抱いてしまうのです。
ふと、文庫版を自分の手元に置いておきたいなぁと思いました。
そして自分達がいわゆる「危機的状況」を迎えて困った時にでも読んでみようか、なんて思ってみたり。
そんな時にこの本を読むと、なんとなく肩がの力が抜けていったりするので不思議です。
ある種のクスリみたいなもんかもしれませんね。
ところで、うちの奥様は江國さんのようでもないし、僕も江國さんのダンナさんのようでもありません。
彼らとは何もかもが違います。
それは当たり前の話なのですが、不思議とこの物語のお話と自分たちが、変にシンクロしているところがありました。
夫婦という概念の根本は一緒なのかもしれませんね。
…ま、それはさておき。
この本の中で描かれている場面場面がまるで小説のヒトコマのようです。
(いや、たしかにいくら事実を反映したとはいえ、これは「小説」なので当たり前なのかもしれませんが)
そういえば、結婚生活っていうのは、言葉は悪いですけれどお互いに「寄生」して生きていくようなもんだと思う事があります。
いや、「扶養」とかそういった現実的な意味ではなく。
お互いをある意味よりどころにしている所はあると思います。
そういえば、ある女性の方が
「ダンナという人は「結婚している」という事実以外、私を養う義務と理由は無い。
私は日々彼の身の回りの世話を焼くだけで寝食の場所を獲得でき、彼の賃金を搾取することになる。
「結婚」と言うのはものすごい制度だと思う。」
…という風な事をおっしゃっていました。上手いこと言うな、と思いました。
続いて、
「「愛情」とか「安らぎ」とか言う綺麗な言葉で包み隠したところで
「結婚」という制度の根本は多分そういうことだ。」
ともおっしゃっていました。
にべもないお言葉ですが、たしかにこういう見方もありますよね。
ものすごく正しい、と思います。
しかしながら、結婚生活。
人生のけっこうな部分をしめることになりますし、それだけで終わりにしたくないものです。
既婚者の方、近々結婚される予定がある方、江國さんのファンの方におすすめです。