この世では一緒になれない縁というものがあるんだ。
好きな人を亡くしてしまった、喪失のお話です。
主人公の松本朔太郎は幼馴染のアキという少女に引き寄せられていきます。
しかし、アキは病気で死んでしまいます。
アキを亡くしてしまった朔太郎は過去、現在と転々としながらアキの思い出をつづっていく、というお話です。
このお話を読みながら思ったのは、人の死についてでした。
僕が近親者を亡くしたと言えば父親ですが、一緒に暮らした記憶の薄い人(僕が小さい頃に母と離婚し、別居してました)が死んだと聞いても、あまり気持ちは動きませんでした。
しかし、今もし自分が大切にしている人を亡くしたらどう思うでしょうか。
考えただけで涙がでてきそうです。
大切な人がなくなったときその人の魂はどうなるのか、天国はあるのか。
…というのがお話の中で出てきますが、どうなのでしょうね?
僕は霊的な事であるとか、死後の世界については考えたことがありません(もし存在したら怖くてしょうがないというのもありますが)
死という物は眠るように体験できるものではないか、と思っています。
事故などで怖い一瞬があったとしても、すぐに記憶らしき物もなくなるでしょうし。
僕はまだ死生観らしきものも持たず、また、そういうことを思ったこともなかったのですが、そういう事をちょっぴり考えてみたのでした。
お話の中で描かれるアキと朔太郎の純愛も良いのですが、僕は朔太郎の祖父が気になりました。
個人的な感情が背景で、朔太郎よりも祖父の気持ちに感情移入してしまいました。
ところでこの本、突然どうしてこんなに話題になったのでしょうね。
2001年4月に出た本なのですが、話題になったのは何故かここしばらくになってからのような気がします。
「泣ける」とかって評判でしたが、僕は大きく心動いたものの、残念ながら泣けるほどの内容ではありませんでした。
ちなみにこの本、デザインが秀逸です。
特にカバーをとった本体(?)の絵柄がいいなぁ、と思いました。
現在すごく大切に思う人がいる方、まだ大切に思う人がいない方、片山恭一さんの本を読んでみたい方に、おすすめです。