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□ 著書名    【落花流水】
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□ ジャンル   短編集
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□ 著者      山本 文緒
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□ 出版社     講談社文庫  2002.10.25発行  261ページ
              ISBN4-08-747498-4  476円(税別)
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因果はめぐるわねぇ。

タイトル、「落花流水」とはこんな意味です。

物語は、10年ごとに区切って7話に渡って続きます。
1967年、甘やかされた7歳の少女マリとハーフの12歳のマーティル少年の話で始まります。
7歳だった主人公、手毬も、2話では17歳になり、という具合で10歳づつ年齢を重ねて、2027年まで10年ごとに短編が続きます

そして、各話ごと主人公が変わりますが、おのおのの登場人物、内容につながりがでてきます。
登場人物たちは、抗えぬ水の流れに乗り、人生を渡っていったのかもしれません。
人は、結局は親と似たような事になるのでしょうか。

ラブストーリーかと思いきや、かなり残酷な内容でした。
この本を読みながら、バイオレンスな表現で語られるような内容が恐怖というものではなく、人の日常にこそ恐怖が潜んでいるのではないかと感じました。

親の生き方を嫌っていながら、何故か同じような道を歩んでしまう。
僕にも少々心当たりのある事です。
惹かれるものとか、考え方とか、行動とか。
気が付いたら自分があまり好きではない父親と似ていっているような気がします。
このお話に出てくるほどすごい家庭に育ったわけではありませんが、僕もそれなりに事情がある家庭で育ちました。
しかし、このお話にでてくる母親にしても子供にしても、自分の近親者でなくてよかった、などと思ってしまうという事は、それなりに自分が育った家庭というのもシアワセであったのか、と考えるに至りました。
人の心は移ろうものですが、僕も自分の両親について、素直に考えれられる事ができるかもしれません。
 

親の事を考える事がある方、子供の行く末について考える方、山本文緒さんのファンの方、におすすめです。
 

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Copyright(C) Nobuhiko Takano 2004