物事を楽しむコツは、物慣れないことだ。
かの9・11事件に巻き込まれた家族の物語です。
主人公は、十六歳の双子の兄妹ロビンとハーモニー。
このふたりの視点が交互に入れ替わりつつ、お話はすすんでいきます。
アフリカ系アメリカ人で、高校教師の父と、働くイタリア系アメリカ人の母がいるのですが、その両親は兄弟が十五歳の時、離婚します。
ロビンは、母とニューヨークで暮らす道を選び、ハーモニーは父とともに、父の出身地である南部に移住します。
それから一年ほど経過し、ロビンが父と兄を訪ねて南部に遊びにくるところからお話が始まります。
兄妹のそれぞれの恋や、テロに巻き込まれた母親を心配する家族や親戚。
それぞれの登場人物がよい味をだしていて、なかなか読ませてくれます。
ニューヨークのワールド・トレード・センターのテロで彼らの母が被害に遭ってしまいます。
そこで母の生死もはっきりせず、どちらかというと死の予感が色濃くなる頃、ハーモニーは心配して連絡をとってきた恋人の声に泣くシーンがあります。
彼はそこで「悲しくて泣いているんじゃない、悲しみが、彼女の声を聞ける喜びを引き立てている!」と。
肉親の死という最悪の出来事が、生そのもののあかしである恋を「甘美」にしてしまう恐しい逆説、ということで。
一般常識的には非常に残酷な事ですが、僕にはその気持ちがすごく理解できてしまいます。
かけがえのない大切な人間がこの世から消え去ってしまうことによって解る事というのは、すごく効果が高く、時として実に皮肉なものでもあります。
ところでこのロビンとハーモニーと言う名前、読み始めた時、なかなか両者の名前と性別が一致しませんでした。
ロビン=男の子 ハーモニー=女の子 と名前で判断してしまうのは、僕だけでしょうか。
またこのお話では人種差別的なお話がでてきます。
残念ながらこういったことは今でもあるようですね。歴史もありデリケートな問題で難しいところでしょうが、こういった事がなくなると良いと思いますね。
「人生、給料日が来れば幸せになれる」なんてありますが、ここ数年、当たり前のように享受しているせいか、給料日はあまり楽しみではなくなりました。
住宅ローンその他の支払いのほうが気になってしまいます。
給料日だから何々をしよう、という発想は我が家にはありません。
このお話、家族的な気持ちがふと刺激される本でした。
僕もどちらかというと母と疎遠になりがちな今日この頃なのですが、ちょっと仲良くしようかなぁ、などと思ってみたりしてみたのでした。
大切な家族がいる方、ここのところ家族と離れ気味の方、山田詠美さんがお好きな方、におすすめです。