「愛に生きるのは、安全でも適切でもありません」
江國さんの書き下ろし短編小説集です。
30、40代の女性を主人公にした、10編のお話が収められています。
年齢も環境も、更に生きている場所さえも違う、10人の女性たちの人生の一部をつづったお話です。
ストーリーというほどのものはなく、その節々の人の会話などで描かれています。
ほとんどが「私」ないしは「あたし」などの一人称で語られており、読みやすいです。
恋愛面にしても何にしても、泣き叫ぶようなぶつかり合いはなく、生活臭がまったく感じられません。
まさしく淡々と物語は進んでいきます。
祖母を病院に見舞ったときの母と妹と私の3人の女性のたわいない会話で綴る、表題作「泳ぐのに安全でも適切でもありません」
外にアパートを借りている夫が自分と子供に会いにくる「動物園」
夫との距離を感じる妻を描いた「犬小屋」
ボウリングをする主婦たちの心の内側をうかがった「うしなう」
淡々としている文体の割には、女性の一瞬の感情を繊細に表現していると思います。
男の僕には、あくまで想像でありますが。
しかし、僕は割と女性的な性格をしているらしく、所々痛いほど解るところがありました。
本の題名、「安全でも、適切でもない」…しかし、なんとも意味深な書名ですね。
できるかもしれないけど、できないかもしれない。
大抵は安全でも適切でもない人生なのだから、瞬間を大切に生きよ、という事なのかも知れませんね。
日々の生活に快適な事を求めている方、短編小説が好きな方、江國香織さんのファンの方、におすすめです。