>…ラストシーンがどうなるのかは、ここではふせておきます。
…という風にしたのですが、「もったいぶらずに最後まで教えやがれ」というご指摘があったので、少々補足します。
結果、どうなってしまったかといいますと…。
三津子は狂ってしまって、失踪して姿を消し、忠春はその2年後に他の女性と再婚するも、過労死で亡くなってしまう、といった結末です。
「おしまいの日」が来たとき三津子は忠春の子を妊娠しており、お腹の中にいる子供と共に、その後もう二度と忠春はおろか、友人の久美の前にも姿を見せません。
その久美宛てに三津子の手紙が残されていたのですが、もしかして自殺、という久美の憶測に反して(読んでいた僕も三津子は自殺したのではと思いましたが)
「死なない。子供をしっかり育てる」という三津子の強い意志が記されていました。
なんでも、「すっごくたいせつな存在」な忠春と「同じくらいたいせつ」な忠春の子供、両方を同時に「たいせつ」にできず、同じく想うには耐えきれないとかで。
・・・ううーん。それはそれでわからないでもないですけど・・・
そもそも狂い始めた三津子、妊娠して体調がすぐれないのは「宇宙人に寄生された」という妄想にとりつかれます。
お腹に違和感がある、熱っぽいなど、それって白い虫とか宇宙人に寄生されるわけではなく、誰がどう見ても妊娠しているからであるのに、三津子は意識せずに妊娠の事実を忘れたことにして認めません。
でも一方ではちゃんと正常な思考をしているんです。
「聞こえている」のに自分にとって認めたくない物は聞こえない。
そのアンバランスが現実っぽくてなんとも恐ろしいです。
忠春も忠春で、三津子が失踪して行き先不明だというのに普段と変わらぬ生活を続けて、あげくに新しい女性と再婚をして、とそれも普通じゃないような気がします。
狂っているのは三津子だけではなく、忠春のほうもかもしれませんね。
あれだけ無理に働けば過労死という結果は当然なのですが。
失踪した三津子がどうなったのか、気にならないのでしょうか。
いや、単に三津子がいなくなったら生活に不便が出たので新しく身の回りの世話をしてくれる人を探したのかもしれません。
でもそれって機械とかの「消耗品交換」みたいで、悲しい。
しかし、何が「正常」で何が「異常」なのかを考えさせられますね。
客観的には、もちろん狂い始めた三津子は「異常」な状態で、サラリーマンとして職業を選んだからには仕事を頑張って働くという忠春の姿勢は「正常」なのですが。
忠春を結婚相手に選んでしまった三津子が運が悪かったのか、会社に働かせ続けられた忠春が社会の被害者なのか、今となってはなんともいえません。
ただ、お互いがもうちょっと違ったパートナーを選んでいたとしたら、この物語の結論は変わったかもしれませんね。