物にも人にも、本来いるべき場所というのがある。
本来いるべき場所、そしてあるべき姿が。(P.75)
江國香織さんらしいといえばらしいのですが、何も残らない小説です。
何も残らないという表現はちょっと正しくないような気もしますが。
今回は江國作品では珍しい男の主人公。しかも兄弟。
江國さんの本では姉妹が多いような気がします。
また、多くは金銭的にも余裕がありそうで衆目麗しいといった登場人物が多いような気がするのですが(これは僕だけですか?)、今回の主人公はあまりぱっとしない男兄弟です。
ぱっとしないだなんて言ってないで、もっとストレートに言うと、あまり女性に好まれなさそうな人々です。
恋愛に縁がなくて、ちょっとおたくっぽくて、といろいろヤバイところがあるのですが、どこが一番マズいかと言うと、兄弟とも(特に兄がその傾向が強い)すごく後ろ向きな考え方の持ち主である事です。
まぁ、後ろ向きと言ってもいろいろありますが、もうちょっと明るく物事を考えればいいのに…と思ってしまいます。
この本の中でも、二人は、それぞれ女性に恋をしますが、結局は実らない形で終わります。
しかしこの兄弟。兄弟思いであったり、すごく母親思いだったり、良いところも沢山あります。
そんな親子や兄弟なんていねぇよ、なんてヒネた見方もなきにしもあらずではありますが、なかなかほほえましい人々でありました。
結局はそれだけのお話だったりもしますが、この本はお話に漂う「空気」みたいなものを楽しむものかと思ってみたりします。
ALL aboutでもこんなページがありました。
ところでこの本。女性セブンで連載されていたもので、時折連載中に立ち読みしていたりしたのですが、なかなか肩身の狭い思いでありました。
単行本になるのが待ち遠しい作品でありました。
ご兄弟がおられる方、一人っ子の人、江國香織さんのファンの方、におすすめです。