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□ 著書名         【孤宿の人】
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□ ジャンル        時代小説
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□ 著者           宮部 みゆき
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□ 出版社         講談社文庫 2005.6
                    上巻:ISBN4-404-03257-9 1890円 405P
                    下巻:ISBN4-404-03258-7 1890円 423P
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あの子は御仏に会うた。

宮部さんの時代小説です。
【ぼんくら】のような内容かと考えつつ、この本を手に取りました。
その気持ちはちょっと裏切られました。正直なところ、読後感があまりよくありません。
嫌な話という意味ではなく、ただただ悲しくなってしまうのです。

舞台は四国は讃岐、金比羅大権現さまのお社に近い丸海藩(架空の藩です)
二人の女の子を中心にお話は進みます。
阿呆の「ほう」と名付けられた子、ほう。
彼女は生まれてこのかた過酷な人生を経て、丸海藩の医事を司る「お匙」(医者ですね)の井上家にやっかいになることとなります。
一方、漁師町で生まれ、女だてらに「引手(岡っ引きみたいもんです)」を目指す宇佐。
漁師だった父を海で失い、母も早くに亡くした天涯孤独の身。
そんな中、ある人物がこの丸海にやってきて…、という具合にお話は進みます。

結末は、TVの時代劇のように単純明快勧善懲悪ではありません。
ここらが素敵で味がある宮部作品。…とはいえ、僕としてはやはり結末が寂しかったです。
解っていても、自分が気に入っていたキャラクタたちの結末が受け入れがたかったのかもしれません。

物語の大切なところを占めることになる「加賀さま」が印象深かったです。
果たして、人間は何を持ってして「悪」となりえるのでしょうか。「本当の悪」はいったい何なのでしょうね。
そんなことを考えたら、また悲しくなってきたのでした。
悲しい悲しいとばかりいいつつ、やはり登場人物たちの心情の動きはすごく上手に表現されています。
実は一読しかしてないのですが、再度読む時は、ちょっと気をつけて読みたいと思います。

まったくの余談ですが、この本を読んでいるときにナチュラルハイのCDをずーっと聞きながら読んでいたせいか、ある曲がこの本のイメージソングの如く状態に。
音楽を聴いたらこのお話を思い出すようになってしまいました。
宮部みゆき+ナチュラルハイ。なんとマニアックな…。
 

時代小説が好きな方、宮部みゆきさんのファンの方に、おすすめです。
 
 

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Copyright(C) Nobuhiko Takano 2005