===========================================================
□ 著書名    【いつか記憶からこぼれおちるとしても】
-----------------------------------------------------------
□ ジャンル   小説
-----------------------------------------------------------
□ 著者     江國 香織
-----------------------------------------------------------
□ 出版社     朝日新聞社  2002.11.15発行  271ページ
             ISBN4-02-257802-5  1200円(税別)
===========================================================

17歳の気持ちを、あなたはまだおぼえていますか?

6つの短編です。
共通の舞台で、登場人物、会話やエピソードの一部がリンクしています。

同じ制服を着ていて一見何の問題もなさそうな女子高生でも、抱える問題はやはりそれぞれ違うモノなのですね。
でもそれは、なかなか他者から理解できないものだったり。
まぁ、これは女子高生だけではなくて、社会人でもおうおうにしてあることですね。

後で知った事ですが、この6つのお話のうち、4つは過去のもので、残り二つが書き下ろしのものだとか。
そう思って読み直してみると、なんだか雰囲気が違うことに気付きました。

お話の中で、精神分裂症で他界してしまう妻が、という下りで高村光太郎の事が出てきます。
その光太郎は妻を亡くしたとき、
「智恵子の死による精神的打撃は実に烈しく、一時は芸術的製作さへその目標を失ったような空虚感にとりつかれた」
…と言っています。
それほどまでに人を想うということがあるという事を、僕は割と最近に知りました。

ところでこのお話の中に、僕と同じ名字の「高野さん」が出てきます。
なかなか悪い子だったりするのですが、まぁ、それはなんとも言えないところで。
「櫛とサインペン」で、その高野さんから抜けられなくなってしまう男性が出てきます。
立場、条件、何もかもは違いますが、今の僕はその男性の気持ちが痛いほど解ってしまいます。
 

学生の頃の事を覚えておられる方、過去を懐かしく思われる方、江國香織さんのファンの方、におすすめです。
 

(「本のお話」に戻る)

(トップページに戻る)


Copyright(C) Nobuhiko Takano 2004