人間はみんな、こんなふうに隠し事をして生きているものだろうか。
宮部さんの時代物小説短編集です。
実は宮部さんの時代物をちゃん読むのは初めてです。(何冊かは斜め読みはしていたのですが)
ついつい現代物に目がいきがちな宮部さんですが、こういった時代物も沢山書いておられます。読んでみたら、流石と言う感じでした。
時代や舞台こそは違えども、現代とまったく同じの人と人が織りなす人間模様、そして文庫版の解説にある通り「名もなき人たちの日常にひそむ一瞬の闇」が上手く描かれていると思います。
この本では、
堪忍箱 かどわかし 敵持ち 十六夜髑髏 お墓の下まで 謀りごと てんびんばかり 砂村新田
の8編が収められています。
共通するテーマは「人は誰でも人には言えない秘密がある」といったところでしょうか。
養い親に言えない秘密を抱える兄妹たちに隠しておかなければいけない秘密を背負った親の話「お墓の下まで」のラストが印象的でした。
もう一つ、現代でも同じ事がありそうな「てんびんばかり」の登場人物達の心情の動き。
一方、表題作の「堪忍箱」。
時代劇で似たようなあらすじのものがあったような気がします。もちろんラストは全然違いましたが。
決して中を見てはいけないという、その黒い文箱。
あの境遇であっても、僕は中を覗いてみたいと思いました。
時代物がお好きな方、時代劇がお好きな方、宮部みゆきさんのファンの方、におすすめです。