幸福とは呼べぬ幸せも、あるのかもしれない。
ある家族(父、兄妹、長兄の娘)がそれぞれ主人公となる6編の連作短編小説。
六編に分けられた内容で、それぞれ別の人物が主人公になっています。
結構な人数が出入りするのですが、巧く書かれています。
いわゆる「禁断の恋」ってのが出てきて、これがお話の核となります。
しかし、お隣の国のドラマなどのような安直さもなく、(本人達にとってはかわいそうですが)良い流れでありました。
この主軸である「禁断の恋」より、自分の実体験をもとに、他のある登場人物の気持ちが痛いほどわかってしまいました。
悲しいけど、そうするしかなくて、でもそれも悲しくて。
仕方ないの一言では切り捨てられないものがあるのが人生ではないのか、なんて思ったのでした。
父が早々に僕の人生から去っていって、ちょびっと変わった家庭で育った僕としては、いろいろ考えることがありました。
おかげさまで僕の年代には割と珍しく一人っ子でして、兄弟というものが羨ましくあった時期もありましたが、一人っ子でよかったかなぁ、なんて思うときもあるのです。
まぁ、これはどちらもどっちであることと考えます。
またこのお話で印象的だった戦争について。
戦争体験をしている祖父母に育てられた僕としても、考え込んでしまいました。
また現在、妻の勤務の関係で、特定アジアの問題について実際に触れることの多い自分としても、複雑なお話でありました。
(思想的な事はこういうところで書くまい、と思いますが、僕個人は靖国神社参拝賛成派であり、特定アジアへは強く物申したいと考えています)
…っとまぁ、家族のあり方、自分の好きな人との距離、過去と現在の隣国との付き合い方。
いろいろ感じること、感じることの多いお話でありました。
ところで、同時期に手にとった【夜の公園】でも「暁(あきら)」が登場していたもので、なにやら感慨深かったです。
兄弟が居る方、兄弟が居ない方、ちょっと悲しい本を読みたい方、におすすめです。