死は生を引き立てる。 生は死を引き立てる。
短編集です。
いずれも、人を愛するという事から生まれ出ずる「聖なる残酷」がテーマです。
「MENU」、「検温」、「姫君」、「シャンプー」が納められています。
どれもこれも印象深いのですが、表題作「姫君」に一番心引かれました。
妙なバランスでいる摩周と姫子と、あまりに衝撃的なラストが印象的です。
僕も今、大事にしている人、大事にしようとしている人がいたりしますが、もしもその人がいなくなったら、と考えた事があります。
過去、実際に経験した事もありましたが、大切な人がいなくなってしまったやるせなさ、また、いなくなるであろう事が解ってしまった時の不安でどうしようもない気持ち。
なんとも言えないあの感情。
この本を読みながら、そんな事を思い出してしました。
この本、「MENU」で本に引き込まれ、「検温」の一風変わった書き方にいろいろ考えさせられ、「姫君」でダメージを受け、「シャンプー」でリセットされた感じがします。
もしかしたら、そういった影響も考えてあったのかもしれません。
短編集とは言え、順番に読んでいった方が本としての効果があったのかもしれません。
聖なる残酷をお持ちの方、地球のなくし方を知っている方、イカの塩辛がナメクジと酷似していると思った方(お友達からネタを頂戴しました)、山田詠美さんが好きな方にオススメです。