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□ 著書名    【光ってみえるもの、あれは】
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□ ジャンル   小説
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□ 著者     川上 弘美
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□ 出版社     中央公論新社  2003.9.7発行  327ページ
             ISBN4-12-003442-9  1500円(税別)
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ああ、やっぱり僕は早く大人になりたい。

祖母と母親と3人家族でクラス江戸翠(男子高校生)の日常のお話です。
「みどり」という名前の男の子っていうのはどうかというのもありますが、この家族ならその名前を付けることも不思議ではあるまい、という感じです。
余談ですが僕はこの漢字がなかなか読めなくて、難儀しました。最初にどういう訳か「ひすい」と読んでしまい、それが定着してしまいました。
祖母も母もマイペースというか、ちょっと変わった人たちです。
祖母のタミコさんは、ときどき「翠くんの生き血を吸いたくなる」などと言ったり(むろん冗談でしょうが、そのような冗談が通用する家ってのもどうかと思います)
未婚の母である愛子さん。彼女は、「ふつう」である翠に少し不満を持っていたりします。
ちょっとかわってるなぁ、と思いつつ、こういう家族もいいかな、なんて思わされてくるところが怖いところです。
あと、この家族を取り巻く登場人物。
友人の花田と翠の彼女の平山水絵。担任のキタガー。
そして、たまにやってくる翠の「遺伝子上の父親」の大鳥さん。
登場人物一人一人が、きちんと存在していて、いい感じにいい味出しています。
また、登場人物と舞台設定にこのお話の魅力があるのかと思う次第です。
大事件も、感動話もありませんが、楽しく読み進める事ができます。
人間の持つ暗さみたいなものを目の当たりにしてしまった僕には、「悪い人」が出てこないのが嬉しいお話でした。

ところでこの本。「みずみずしい家族小説」と帯にありました。
はたしてこの本が「家族小説」というジャンルかは疑問です。
いや、その前にそれらしい要素があるのに、「青春小説」とも「恋愛小説」とも括れない、面白い本でありました。
かつて読売新聞の連載小説になっていまして、毎日読みつつも、いつか続けて読みたいと思っている頃に本になってくれました。
僕は残念ながら気づくことができませんでしたが、連載時に比べて加筆修正されているらしいです。
 

変わった家族と暮らしている方、普通の家族と暮らしている方、川上弘美さんのファンの方、におすすめです。
 

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Copyright(C) Nobuhiko Takano 2004