人間五十年
まずはこの「半落ち」という単語。
「完落ち」ではない、つまりはすべてを供述していないという状態を指す、警察内の隠語だそうです。
お話としては、元刑事の梶が、アルツハイマーの妻を殺害して、自首します。
犯罪についてを自供しますが、殺害後の二日間あった出来事だけは話そうとしません。
なぜその二日間について話せないのか、それほどまでにその二日間に隠す事があったのか、というのがお話の鍵になります。
嘱託殺人、家族介護、警察と検察の確執、といった沢山のエッセンスによってこのお話は構成されています。
どれもこれも実に重い話であるのですが、ふと、「人は何のために生きるか」そんな事を考えさせられた本でした。
結末については賛否両論あるかと思います。
僕は結構ぐっときましたが、細君には不評でした。
このお話、映画化されました。
キャストもなにやら良い感じですし、いつか映画も見てみたいなぁ、と思いました。
また、このお話で骨髄移植について触れられているのですが、この本や映画化された影響で、骨髄バンクへの登録者が増えたとか。
新聞などを見ておりますと、介護疲れが起因となった殺人事件を目にすることがあります。
むろん、言うまでもなく、家族であるものが(いや、その他の誰かであっても)たとえ頼まれたからといっても病気である人を殺すことは許されません。
人が勝手に本人の人生を終わらせることはできないわけです。
とは言え、自分の病気について知ってしまい、なお生きる事を強いられる苦しみなどを、想像はできても、本当の意味では理解することはできないような気がします。
家族に病気がちの方がおられる方、何かの為に生きている、というものがある方、横山秀夫さんのファンの方におすすめです。