好きをつきつめると、からっぽの世界にいってしまう
個性豊かな面々が出入りする古道具屋さんのお話。
ちなみに「古道具屋」で、「骨董屋」ではありません。
骨董屋だったら、遠いお知り合いがいる関係で、お話を聞いたことがあります。
そこで、このお話に出てくる、あるスジの人から「鎧」を買いつけるシーンと似たような事を聞いたことがありまして、不思議な世界だなぁ、と思ったのでした。
また、いわくつきの茶碗のお話。これもまた実在するそうです。
このお話、やはりジャンルで分けるなら恋愛小説でしょうか。
仕方ないとはいえ、どーにも煮え切らない二人で、ちょっとイライラしました。
でも不思議なのは、読み終わってからすぐにでも最初から読みたくなる感じです。
主人公のヒトミと、それにくっつく(?)タケオはほどほどで、店主のハルオさんが気になりました。
なんといいますか、実に「女にだらしない男」で、駄目な人なんですが、憎めない人です。
お話のなかで、彼がケガをするところがあるのですが、刺されてもしかたない、なんて思いつつ、すごく心配してしまいました。
また、そのハルオの姉マサヨさんも、「この姉ありてこの弟あり」という感じでよかったです。
特に彼女の恋愛観が興味深く読めました。
舞台から登場人物の味付けまで、例によって「川上さんの世界」です。
僕は好きなんですが、受け入れれない人は絶対無理だろうなぁ、とか思いつつ読みました。
ずーっと読みながら、終わりが見えないなぁ、と思っていたらラストあたりで突然展開が早まります。
結末については、読む人それぞれが違うことを考えそうですね。
最後の章で繰り返し出てくる登場人物達を見ていて、やっぱり良い味が出てるなぁ、と思ったのでした。
しかし、リアルなようで、なんだか不思議な人間関係でありました。
やはりこの人のお話は、リアルな気がするけど、やっぱり作り物の世界で、それを楽しめるのが味だと思います。
古物商に興味がある方、短編がお好きな方、川上弘美さんのファンの方に、おすすめです。