わたしはどうしてまつぶえくんをすきになったんだろう?
かつてアフタヌーンで連載していたマンガです。
最初からこんな事を言ってしまってはアレなのですが、これはちょっと一般受けしないマンガだと思います。
…といいますのも、コマの背景によくわからないモノがごちゃごちゃと書いてあったり、作中にちりばめられたネタなどがちょっとアレでして。
テーマはいいんですけどね…。
ともかれ、こういったものが好きでない人には受け入れがたいマンガであろうと思います。
しかし、これがまた恐らくこのマンガの魅力でもありますので、なんともムズカシイところではあるのですが。
作者、植芝氏の好みによって書かれた女の子(…と書くと否定的に聞こえそうですが、そう言う意味ではなく)とマニアックなネタを楽しむマンガです。
巻数があがるたびに、より倒錯的なエッチっぽさが上がっていったような気がしたのは、気のせいでしょうか。
それはともかく、内容を少しだけ。
高校生の女の子、戸川安里香(とがわありか)は、同じクラスの男の子、松笛くんを好きになってしまいます。
この松笛くんというのが不思議な少年でして、戸川さんの涙を飲みたがったり、襟足を剃りたがったり、と妙な注文をつけたりします。
そして、戸川さんは、どうして松笛君が好きになったのか、その理由を知りたいと考え、「人はどうして誰かを好きになるんだろう」という答えを探していきます。
結果、「生命の神秘」という命題にまで広がっていく事になるのですが、なかなか面白い理屈もちりばめられています。
このマンガで語られる話が真か偽かというのはともかく、おもしろい解釈であると思います。
ストーリ的には「冥界編」「学園編」「精霊編」となっており、「冥界編」がこのお話の山場です。
ちなみに「学園編」は「冥界編」での展開とうって変わったものになっています。かつてそれを知らずに単行本を読んでいて、あまりの変わり様にびっくりしました。
現在、「精霊編」の続きとも取れるマンガ、「夢使い」がアフタヌーンにて連載されています。
こちらでは主役が松笛くんと戸川さんではなく、このディスコミュニケーションにも出てきた三島姉妹が主役となっています。
ところで、ほんの少しだけ美術をかじっていた僕としては、植芝氏曰くの「好きなもので画面を埋める」というのが面白いと思いました。
一枚の紙に好きなようにコマを割って、中にイラストを描いていくと、その人の内面が色濃く現れる、とのことで。
一見意味がないような落書きでも、その人の内面を示すひとつの手がかりとなる、と。
たしかにその通りなんですね。他でも似たような話を聞いたことがあります。
こうしたことから、イラストというものの本質的なおもしろさが見えてくるような気がします。
ものすごくどうでもいい事なのですが、近所に住んでおられる方で、戸川そっくりのおばちゃんがいます。
おばちゃんですが、なんだかそっくりなんですよ。
マニアックなネタでも大丈夫な方、YMOが好きな方、植芝理一さんのファンの方におすすめです。