あなたの悪夢を退治します!
宮部さんのSF調のお話です。
このお話では、表題にもなっている、DB(ドリームバスター)と呼ばれる人たちが出てきます。
このDBとは人の悪夢に出る「凶悪犯」を倒しに来る賞金稼ぎの事です。
DBは、悪夢に悩まされている人から依頼を受けて仕事をするわけではなく、その人の悪夢に、直接違う世界からやってきます。
その悪夢とは、ある事故によって意識と人格だけの存在と化し、現在の我々の世界に解き放たれてしまった50人の凶悪犯がでてくるもので、その凶悪犯を狩りにくる、というお話です。
DBのシェンやマエストロはその「凶悪犯」を自分たちの力だけでは退治できません。
DP(ドリームパーソン)と呼ばれる、夢を見ている人に、対決の鍵となる記憶を思い出すよう協力を求め、倒すことができます。
また、この「凶悪犯」はどこの誰の夢にでも出てくるわけではありません。
DPが、自分の心の内に導いてしまった「弱さ」があります。
登場人物達の個人の問題や身の上の話も話は触れられます。
ミステリーというジャンルを得意とする宮部さんらしい、丁寧な描き方で物語は進みます。
人は誰でもひとつやふたつ、他人には触れてほしくないトラウマを心の内に抱えこんでいたりするものです。
最近では、一般の話題でもトラウマ(心的外傷)という言葉はよく聞くようになりましたが、トラウマとは、情緒が不安定になったり、自分に自信が持てなくなったりして、時には日常生活にも支障をきたすようになる精神的障害のひとつとして、臨床心理学や精神分析学の分野で用いられている言葉です。
人というのは、程度の差こそあれ、ともすると深刻なトラウマになりかねない、大なり小なりのストレスにさらされて生きているものであり、それがその人の心にわだかまっていたとしても、けっして不思議なことではありません。
体が健康で、意志を強く保つことができる間は問題ないでしょう。
風邪をひいて体調を崩すように、心も調子が悪くなることがあります。
このお話では、私たち人間が抱えずにはいられない心の弱さと、DBと協力して、その弱さと立ち向かい、克服していくという仕立てになっています。
肝心のお話は「これから」という所で終わっています。気になるところが一杯です。
「2」も出ている事ですし、早々にそちらに取りかかるようにいたします。
夢をよく見る方、夢をまったく見ない方、宮部みゆきさんがお好きな方に、におすすめです。