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□ 著書名    【誰か】
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□ ジャンル   現代ミステリ
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□ 著者     宮部みゆき
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□ 出版社    実業之日本社  2003.11発行  379ページ
              ISBN4-408-53449-8    1600円(税別)
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どうしようもないほどに、人は自分以外の誰かが必要なのだ。

宮部さんのミステリです。

さる財閥会長の個人運転手が、自転車にはねられ転倒し、頭を打って亡くなってしまいます。
遺族である2人の娘が、犯人をつきとめたいと願い、財閥の広報室勤務の杉村が協力する事となります。
妹は父を偲ぶ本を出版する事によって犯人を見つけたいと願い、10歳年上の姉は 、その出版計画に反対します。
姉によると、死んだ父親は個人運転手として財閥で雇われる前は職を転々としており過去に危うい仕事に手を染めていた節もある、との事。
本を出版する事により、その暗部に触れられる事を恐れています。
杉村が姉の思いを尊重しつつ妹の相談に乗ってあれこれお調べているうちにいろいろ解ることがあり…
…とまぁ、こんな具合でお話は進みます。

読後感がいまいち、と評されている事の多いこの本ですが、僕はそう思いませんでした。
たしかに結末は読めてしまうフシはありましたが、宮部さんの本らしい話の進め方だと感じます。
また、その読後感への期待の高さは今までの彼女の作品の評価の高さを物語るのだなぁ、と思いました。
こういうお話があってもいいじゃないか、と僕は思うのです。
ここであげる事はしませんが、お話の中で主人公の母親が毒を含んた「名言」が印象深かったです。
ついでに、こういう姉妹の話、現実で聞いたことあるなぁ、と思ってみたり。
兄姉がいない僕にとってはいまいち現実感の内お話でありますが。

そういえば僕も自転車で通勤する事があります。
いわゆるMTBでして、トップギアまで入ると結構な速度がでます。
人を轢いてしまわないように気をつけよう、と思った次第です。

作中に美空ひばりさんの「車屋さん」や、小林明子の「恋におちて」が出てきます。
美空ひばりさん歌はテレビで放送されていたりするものを祖母が聞いていたのを覚えていたりしてメロディが出てきたのですが、小林明子さんの歌はなかなか出てきませんで。
ドラマの主題歌という事も解っていたし、ちょっと探してみたらすぐに耳にすることができました。
ああ、聞いたことあるある!と思いつつ。
しかしこの曲。すでに「懐メロ」という表現になっているのですね。
 

「誰か」を思い浮かべる事ができるひと、困った姉妹とお知り合いの方、宮部みゆきさんのファンの方、におすすめです。
 

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Copyright(C) Nobuhiko Takano 2004