お話的には、「忠臣蔵」のサイドストーリーというか、外伝的要素というか、その影でうろうろしていた人たちにスポットライトをあてた話です。
なお、登場人物たちがホントに実在したかどうかは謎です。
主役は、将軍の影のお目付役的役割を果たす「ぎょいかんとく」なるものを持ち、その仕事を代々勤めている中根家の家人の、月森十兵衛です。
なお、この「ぎょいかんとく」なるものは印籠みたいなもので、表に仰々しく役名が書いてあるのですが、見せる場所と人によると、かの水戸黄門の印籠のごとく効力を発揮します
話は月森十兵衛が話の中心となり進んでいくのですが、、中野家の家人、するっていうと、ただの人?かと思われがちですが、この月森十兵衛は名前がすでにどっかで聞いた人になっているだけに、かの柳生十兵衛の血を引いていて、超がつくほどの剣豪という設定です。
で、題名にもなっている編み笠ですが、仕事柄、一般人や刺客やらを相手にしつつ、「ぎょいかんとく」の仕事もせねばなりませんので、顔を見せなくするため普段から編み笠を深くかぶっているというのです。
顔のほとんどが編み笠で隠れているので、正体が分かりにくい、と。 思えばこれはちょっと怪しいですね。
元禄時代って、こんな怪しげな人が数多く闊歩でもしていたのでしょうか。
月森十兵衛に関してはこのあたりにして、お話の内容ですが、時代は忠臣蔵と同時に始まります。
例によって吉良上野介を打ち損じた浅野内匠頭ですが、吉良上野介は無罪、浅野内匠頭は切腹と、武士のケンカは「両成敗」となるはずなのに、将軍の片手落ち的な判断のため、武家及び一般人からも不満があがっており、後に将軍も半ば勢いで決めた結果に自省し、吉良上野介を浅野方(赤穂浪士)に討たせてやろうという思いを持って、実質行動ということで月森達が行動を起こすわけです。
でも、それを知った吉良も黙って討たれるわけもなく。
吉良上野介が討たれるのを阻止するために吉良方から派遣されたのが小林平八、そんなことには無頓着でとにかく剣豪の月森十兵衛を倒したい思っているのが、刺客の舟津弥九郎。
船津は一応小林の配下になるのですが、一匹狼的存在で、あまり皆になじみません。
ほかにも清水一学、山吉新八、笠原長右衛門などなど吉良上野介がたのいろいろな家人も絡んできます。
この吉良を警護するために来ている小林なんですが、将軍の採によって生きながらえた吉良上野介は、ずいぶん世間に嫌われており、そのため小林はあれこれつらい目に遭いながら働くのですが、その中で立場上では敵対関係のはずの月森十兵衛と仲良くなったり、と「いい人」な武士です。
そのほかの清水一学などいろんな吉良方の家人も、皆一様に「いいやつ」です。
残念ながら、最期は吉良を護るため屋敷で待機しており、赤穂浪士に、討たれてお亡くなりとなってしまうのですが・・・
ちなみに討ち入り自体に月森が参加するわけではありません。
それではストーリーがめちゃめちゃになるのと、剣豪と並の武士では、まるで子供のケンカに大人が本気で参加するようなモノですし
(別に赤穂浪士たちが弱いという話ではありませんが)
結局討ち入りの時間、月森は近くの民家の屋根から討ち入りを見届けるのみです。
それまで、執拗に月森を狙ってくる船津との剣劇も見物なのですが・・・
執念みたいなもので大怪我を負いつつも月森を狙ってきますが、最期はあっけないもので、月森にけっこうあっさりと斬られてしまいました。
実はこの「編笠十兵衛」、時代劇のドラマ化していたりします。
ちょっと前に、再放送で午前10時に放送していました。
ちなみに僕、仕事の関係で午前中がお休みの週があって、午前中にTVなんぞつける事があるのですが、その週に数回見ているごとに話の始めのあたりが気になってしまって思わず原作本を買ってきて読んでしまった、と。そんなきっかけもあって読んでいた「編笠十兵衛」ですが、いろいろな忠臣蔵本と視点がちょっと変わっていて、解説本などで食傷気味の方にもおすすめです。
池波正太郎の作品ですので、割と安心して読めます。