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□ 著書名         【4U】
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□ ジャンル        短編集
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□ 著者             山田 詠美
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□ 出版社      幻冬舎文庫    2000.8.25発行   249ページ
              ISBN4-344-40018-6   495円(税別)
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恋の化学反応で出来上がった薬品であなたの息を、幸福に詰まらせてみせる。

山田詠美さんの短編集です。
「4U」と書いて「よんゆー」と読みます。
このタイトル、中に納められている短編の一節でも語られているのですが、「4 YOU」と姿を変え、「FOR YOU」となるワケです。
そう見て、素直に「ははぁ、なるほど」と思ってしまった僕は、どちらかと言うと英語が得意なほうではありません。

さて、この本も短編集なのですが、実に沢山の人々やその環境ですとかが出てきます。
突飛なものだったり、「タブー」な関係だったり、そうでなかったり。 ひとつひとつ、読むたびになかなか飽きさせません。
僕が9つのお話の中で気になったのは、「眠りの材料」と「天国の右の手」でした。

「眠りの材料」。うがった読み方をしてしまうと、山田さんご本人の経験を元にした話となるのでしょうか。
かの方にかくいう過去があるかどうかはさておき、なかなか面白いお話でした。
そういえば、ふうちゃんなる強烈な人物が出てくるのですが、あんな風に人に接する事ができるというのもすごい、と感心しました。
自分だったら、到底あのようにはなれません。
ちょっと話題はそれますが、男女間の友情というものについて。
「そんなの成り立たない」と言われる方もおられるかもしれませんが、僕は条件付きで成り立つと思います。
時間の経過に伴って、それ以上にも、それ以下にもなっていくであろう事は否めませんが、ベースのよっては「友情」というカテゴリーも存在しうると思うのです。
・・・もちろん、相手によると思いますが。

もう一つ、「天国の右の手」。

私の見えない手は、多分、もっと、きらきらした美しいものをつかむ。
年ごとに層を成す土の中から、大切なものだけを掘り起こす。そのために神様は、私の手をしまっておいてくださるのだ。

右手を事故で失った渚子のお話。文章が美しいと思いました。
義兄が好きになっちゃう訳ですが、自己愛といいますか、彼女の微妙な感じが描かれています。

ところで、山田さんはあとがきの中で「人生(ライフ)に対して、いかに尻軽でいられるか」という話をしています。
とかくいろいろあるこの世の中。
なんとも軽率っぽいけど、快活で愉快な事に見えます。
余談ですが「尻軽」な状態になるには、心技体の高次元での充実が必要なんだそうです。
「心と体と脳みその交錯するクロスロード」 ・・・なかなか難しいパズルですね。
 

人生という料理に必要な香辛料をお探しの方、山田詠美さんのファンの方方に、おすすめです。
 

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Copyright(C) Nobuhiko Takano 2002